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旭川地方裁判所 昭和29年(行)3号 判決

原告 中越十郎 外九〇名

被告 旭川市

一、主  文

原告等の請求を棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は、「被告が原告等に対し昭和二十九年八月二日附をもつてした原告等各所有の別紙物件目録記載の建物に対する撤去命令代執行のための戒告は、これを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、「被告は原告等に対し昭和二十九年八月二日附をもつて市道第三十六号六、七丁目間横通道路上に存する臨時露店は、既に道路占用期間が満了したから道路法第七十一条第一項に基き同年同月十三日までにこれを撤去して道路を原状に回復されたく、若し右期日までに履行しないときは行政代執行法により代執行を行う旨戒告した。

右にいわゆる露店とは原告等各所有の別紙物件目録記載の建物を指すものであるところ、右戒告は左の理由で違法である。

(一)  本件各建物の敷地は、元来道路法上の道路であつたが、被告が昭和二十五年二月中原告等の居住兼営業に使用する本件建物の建築用地として指定したものであるから、右指定と同時に道路としての供用を廃止したものと言わねばならず、したがつても早道路法を適用する余地がない。

(二)  本件各建物の敷地は、原告等が前記建物を建設所有する目的で昭和二十五年二月中被告から賃料を坪当り月八十円とし期間の定なく賃借したものであるところ、

(1)  当時道路上の建物建設に関し何等の法的制限がなかつたのであるから、右賃貸借契約は適法であり、したがつて道路法の適用をうけるいわれがない。

(2)  仮りに右賃貸借が不適法であるとすれば、被告は自らした違法行為の結果を道路法に基き処理しようとするものであつてかかることは到底許さるべきではない。けだし道路法第七十一条第一項は適法な使用許可を前提として道路管理者に所定の権限を附与したに外ならないからである。

(三)  更に本件各建物は、永久的木造建築であつて道路法上の露店ではない。けだし同法の露店とは土地に定着した工作物ではなく簡易にして且つ移動し易い施設物(有体動産)を言うのであり、このことは道路法第三十二条第一項に工作物と施設とが明らかに区別されていること、昭和二十八年二月十八日制定旭川市公安委員会規程第五号露店屋台店取扱規程第二条に、『露店とは固定した屋根および壁を設けず道路に設置する出店を言い、屋台店とは移動式であつて簡易な屋根、壁を設けて道路上で営業する設備を言う』と明定されていることに徴し明白であるからである。してみれば、これを露店であるとして道路法第七十一条第一項第三十条により撤去を強要し得べき限りでない。

以上の次第で被告のした本件戒告は違法であるから、その取消を求めるため本訴に及んだ。」と述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、「原告等主張の事実中、被告が原告等主張のとおりの戒告をしたこと、および本件建物敷地が道路であることは認めるが、その余の事実は、これを否認する。本件道路は被告が昭和二十五年二月指定した露店指定地であるが右指定が道路の供用廃止を意味するというわけはないし、又被告は原告等に対し占用料を納入せしめ期間を定めて占用を許可してきたものであるところ、遅くとも昭和二十八年三月三十一日には原告等の占用期間がいづれも満了しているものである。次に本件建物は道路法第三十二条第一項第六号に言う露店であるが、仮りに同第七号の物件又は工作物であるとしても同法第七十一条を適用するの妨げとなるものではない。すなわち、原告等は被告の前記許可を求めるに際し、自らその規格を定め、これを露店として申請しておきながら、許可あるや勝手に改装して住居の如きものにしたのであるから、今更露店でないとして争い得べき限りではない。以上のとおり原告等の道路占用は、つとにその権限を欠くに至つているに拘らず依然占拠を継続しているため、被告は道路法第七十一条所定の手続を経たうえ本件戒告をするに至つたものでこの間何等の違法はない。」と述べた。(立証省略)

三、理  由

職権をもつて本訴の適否につき案ずるに、行政代執行のための戒告は、それ自体既存の権利義務に新たなる変動を生ぜしめるものではないにしても、単なる通知行為ではなく代執行の前提要件たる準法律行為的行政行為であることは行政代執行法第三条により明らかであるから、行政処分に準じて取扱い取消訴訟の対象となるものと解するを相当とする。

よつて本案につき考えるに、先ず、被告が原告等に対し昭和二十九年八月二日附をもつて市道第三十六号六、七丁目間横通道路上に存する臨時露店は既に道路占有期間が満了したから道路法第七十一条第一項に基き同年同月十三日までにこれを撤去して道路を原状に回復されたく、若しこれが履行をしないときは行政代執行法により代執行を行う旨戒告したこと、および右にいわゆる臨時露店とは原告等各所有の別紙物件目録記載の建物を指すものであることは当事者間に争がない。

そこで右戒告が違法であるか否かにつき逐次検討するに、

(一)  本件建物の敷地がもともと道路法上の道路であることは当事者に争がなく、成立に争のない乙第二号証の二、証人前野与三吉の証言によれば右敷地は被告が昭和二十五年二月中原告等の営業のための露店区域として指定したものであるが、それは本来原告等の居住をも認める趣旨のものではなかつたことが認められる。しかして右指定が原告等主張の如く道路の供用廃止を意味すると考うべき根拠は見当らないから、本件敷地は依然として道路であると言わねばならない。

(二)  原告等は本件建物敷地を被告から賃借したと主張するが、証人前野与三吉の証言によれば却つて原告等が道路法による占用許可を受けて本件道路を使用していたことが認められるから右主張はこれを認めるに由ない。もし仮りに原告等主張のとおりの賃貸借契約がされたものとすれば、かかる契約は、道路が一般交通の用に供せられる行政上の設備であるが故に、その目的を害するに至るであろうところの私権の行使を拒否した旧道路法第六条(現行第三条)の法意に稽え無効であると解しなければならないから、原告等の占有は当初から不法なものであつたと言わざるを得ないことになる。しかして原告等は、かかる場合被告が自らした違法行為の結果を道路法により処理しようとするのは、同法第七十一条第一項が適法な使用許可を前提として道路管理者に所定の権限を附与したものにすぎないから許されないと主張するけれど、右法条をしかく解さねばならぬ理由が何等存しないことは同条第一項第一号の文言によるも明らかであるから、右主張は採用しない。

(三)  原告等は本件建物は道路法上の露店ではないから同法により撤去を強要される理由がないと主張する。しかし仮りにその主張のとおり本件建物が露店でないとしても、それが道路法による占用許可の下に道路上に構築されたものである以上同法第三十二条第一項に言う工作物、物件又は施設のいずれかに含まるべきものであることは当然であるから、同法第七十一条第一項にいわゆる工作物その他の物件として右法条適用の対象となるわけで、右主張も亦理由がない。

以上の次第で被告のした本件戒告には原告等主張のような違法はないから、これが取消を求める、原告等の本訴請求は理由なきに帰する。

よつて失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 藤田和夫 市川通雄 神田三)

(目録省略)

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